ししよしよしの生き物イラスト記

生き物を中心に、ワクワクしたものを描いています。水彩、色鉛筆、水性ペンなどを使用。

旅の途中に『アルケミスト』

今週のお題「○○の秋」

引き続き読書の秋。

 

旅のお供にぴったりな一冊。

アルケミスト 夢を旅した少年』

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人生では、思いがけなく上手くいくことってあると思う。私の場合は、大学4年生の時に起きた。

就職氷河期の真っ只中、応募してもどうせ内定は貰えないんじゃないかなと半ば諦めていた。けれど、ふと気になった妙に惹かれる会社にエントリーシートを一枚送ったら、何万倍の倍率を潜り抜けて採用された。

別段、私には何か取り柄があった訳でもなく、その分野に今まで興味があった訳ではなかったが、何か気になるところがあって送った一枚で人生が変わった。入社してから苦労することは多かったが、この会社で学んだことはとても大きく、感謝してもしきれない。

頑張った訳でもないのに、自然と扉が開くような瞬間。思いもしなかった何かと何かが、カチリと噛み合う瞬間。

 

アルケミスト』では、「前兆に従うこと」「宇宙の全てが協力して実現するように助けてくれる」と表現している。

 

スペインの平原にいた羊飼いの少年の冒険譚としても読めるし、人生において大切なことを言葉にして教えてくれる虎の巻でもある。忘れかけていた、本当の夢を気づかせてくれる。

 

自分の心との対話。自然との対話。見えない力との繋がり方…こう言うと、スピリチュアルに思われるかもしれないけれど、自然の中に一人たたずむと感じる当たり前のことでもあるように思う。街で暮らす私たちにとっては自然は遠くなってしまったけれど、どんな人工物も自然から生まれてきた。地球上の全てのものは、どこか遠くの星が爆発した塵から出来ている。

 

数年前、大好きな会社を私は辞めた。あの時も、何か感じるものがあり、辞めたくはなかったが辞めた。

本当に大切なものが何かは、自分の心しか知らない。ある日、自分の心が、自分では思ってもみなかったことを言い出すかもしれない。でも、その時キチンと心の声に耳を傾け、勇気を持って決断する必要がある。

 

充実して働いていた会社を辞めて、本当に良かったのかは死ぬまで分からない。そんなこと考えても仕方のないことだし、自分の心が決めたことだから正しいことだと思う。

 

この本は、人やものと出会うなかで学ぶ、言葉に表せない部分を一粒一粒拾い上げて、上手くお話にまとめ上げていると思う。

 

私の旅と、少年の旅が出会うことで、化学反応が起きたように思う。どこか、心の迷いのようなものが漂って曇っていたところがあったけれど、今はクリスタルのように鮮明に見通せるようになった。

 

あらゆる旅の途中に読むのに最適な本だとオススメする。

 

パウロ・コエーリョアルケミスト 夢を旅した少年』角川文庫、1997